根本原因分析ツールとは?
根本原因分析(RCA)ツールとは、プロセスやシステム内で障害、エラー、イベントが発生する根本的な原因を特定するための手法やソフトウェア製品です。目先の症状だけに対処しがちな一般的なトラブルシューティングとは異なり、RCAツールは、再発防止に向けて問題の本質的な原因を究明します。
代表的な根本原因分析(RCA)の手法には、一連の「なぜ」という問いを用いて問題の根本的な原因を探る「なぜなぜ分析(5 Whys)」、潜在的な原因を視覚的に分類する「フィッシュボーン図(石川ダイアグラム、特性要因図とも呼ばれる)」、および潜在的な故障とその影響を特定するプロアクティブな手法である「故障モード影響解析(FMEA)」などがあります。
Selector.ai、TapRoot、EasyRCAといったテクノロジーツールは、これらをはじめとする手法を用いて、組織がITインフラストラクチャにおけるインシデントの根本原因を特定できるよう支援します。分析とドキュメント化を標準化することで、RCAツールは一貫性を高め、組織が個々のインシデントだけでなく、より広範なトレンドからもインサイトを得られるようにします。
本記事は、ITOpsに関する一連の記事の一部です。
根本原因分析(RCA)ツールを活用するメリット
根本原因分析ツールには、チームが問題の原因をより効果的に特定・理解・排除するのに役立つ実用的な利点があります。調査プロセスを簡素化し、データに基づいた意思決定を支援し、運用全体における説明責任を高めます。
主なメリットは次の通りです。
- 問題解決の効率化:RCAツールは、チームが表面的な症状にとどまらず、より深い調査を行い、真の原因を突き止め、恒久的な改善策を実施できるよう支援します。
- 再発の防止:根本原因を特定し、排除することで、これらのツールは同様の問題の再発を防ぎ、ダウンタイムや運用上の混乱を軽減します。
- 標準化されたプロセス:ほとんどのRCAツールは、調査の実施方法と記録方法の一貫性を高める、構造化されたワークフローやテンプレートを提供します。
- 調査の迅速化:視覚的なマッピング、データ分析、およびガイド付きのフレームワークにより、体系化されていない手法と比べて、調査の完了に要する時間を短縮します。
- 部門横断のコラボレーション:RCAツールは多くの場合、共同での入力をサポートしており、部門横断のチームがインサイトを出し合い、解決策について足並みをそろえやすくします。
- データに裏打ちされた意思決定:データソースとの統合により、RCAツールは推測ではなく実際の証拠を活用できるため、より信頼性の高い結果が得られます。
- トレンド分析とレポート作成:多くのツールはインシデントを時系列で追跡し、チームがシステム全体に関わる問題を特定し、長期的な改善の優先順位付けを行えるようにします。
RCAツールの仕組み:代表的なRCAの手法とテクニック
なぜなぜ分析(5 Whys)
なぜなぜ分析(5 Whys)は、その分かりやすいアプローチから、最もシンプルで広く使われているRCA手法の一つです。問題を言語化し、根本原因が明らかになるまで「なぜこれが起きたのか?」と繰り返し問いかけていきます。通常は5回の繰り返しで進めますが、問題の複雑さに応じて、それより少ない場合も多い場合もあります。それぞれの答えが次の「なぜ」の根拠となり、チームは症状の層を一枚ずつはがしていくことで、根本原因にたどり着けます。
この手法は、設備の不具合やプロセスのエラーなど、単一または支配的な根本原因を持つ問題に最も適しています。シンプルなので専門的なツールやトレーニングがなくても適用しやすく、論理的で規律ある思考プロセスを促します。
ただし、この手法には限界もあります。参加者が質問を早々に止めてしまったり、データではなく推測に頼ったりすると、分析が表面的な原因で終わってしまうことがあります。複雑で複数の要因が絡む問題では、なぜなぜ分析(5 Whys)と、FMEAやフィッシュボーン図といった他の手法と組み合わせるとより深いインサイトを得ることができます。
フィッシュボーン図
フィッシュボーン図は、石川ダイアグラムまたは特性要因図とも呼ばれ、チームが問題の潜在的な原因を特定・分類・可視化するのに役立つ、構造化されたブレインストーミングツールです。この図は魚の骨格に似ており、「頭」は問題の定義を表し、「骨」は考えられる原因のカテゴリーへと枝分かれしていきます。一般的なカテゴリーには、人(People)、方法(Methods)、材料(Materials)、機械(Machines)、環境(Environment)、測定(Measurement)などがありますが、業界や状況に応じて調整できます。
この手法は、プロセスのあらゆる側面を体系的に検討できるようにすることで、グループでの議論を整理するのに役立ちます。たとえば製造の現場では、製品の欠陥を調査するチームがこの図を使い、根本原因がオペレーターのミス、機械の調整、原材料の品質、環境条件のいずれにあるのかを探ることができます。視覚的なレイアウトにより、潜在的な問題の集積を特定し、さらなる調査が必要な領域の優先順位を付けやすくします。
フィッシュボーン図は可能性を洗い出すのに効果的ですが、それ自体が答えを与えてくれるわけではありません。部門横断のチームから意見を集め、その後のデータ収集や検証の方向付けをするための出発点として、最も価値を発揮します。
散布図
散布図は、2つの変数間の潜在的な関係性を探るために使用される統計ツールです。データポイントを2次元のグラフ上にプロットすることで、チームは一方の要因の変化がもう一方の変化と関連しているかどうかを視覚的に評価できます。たとえば散布図を用いることで、機械の速度向上と欠陥率の上昇に相関関係があるか、あるいはスタッフの残業時間と顧客からの苦情に相関関係があるかといったことが明らかになることがあります。
プロットされた点のパターンから、さまざまな種類の関係性が示唆されます。明確な右肩上がりまたは右肩下がりの傾きは正または負の相関を示す一方、点がランダムに分布している場合は意味のある関係がないことを示唆します。これにより、チームは因果関係に関する仮説を検証し、さらに調査する価値のある要因を絞り込めます。
ただし、散布図には限界があります。散布図は相関関係を示すだけで、因果関係を示すものではありません。2つの変数が関連しているように見えても、実際には図に表れていない第3の要因によって動かされている可能性があります。このため散布図は他のRCAツールと組み合わせて使用されることが多く、調査の過程で仮定や推測を裏付ける、あるいは反証するための証拠として機能します。
パレート図/パレート分析
パレート分析では「80対20の法則」が適用されます。これは、結果のおよそ80%は20%の原因から生じるというものです。パレート図は、頻度、コスト、影響の大きい順に問題を並べた棒グラフで、最も影響の大きい要因が左側に表示されます。多くの場合、累積線を追加して、上位の原因が全体の問題のどれだけの割合を占めるかを示します。
この手法は、組織が数多くの繰り返し発生する問題に直面しているものの、そのすべてに対処するリソースが限られている場合に特に有用です。たとえばサービスデスクはパレート分析を用いて、顧客からの苦情のほとんどがわずか2〜3種類のシステムエラーに起因していることを突き止められます。これらの優先度の高い問題に先に対処することで、チームは最小限の労力で大きな改善を達成できます。
パレート図は、データに基づいて問題解決の取り組みを集中させる手段を提供するものであり、品質管理、製造、サービス運用の分野で広く活用されています。しかし、パレート図は診断的なものではなく、あくまで記述的なものです。どこに注力すべきかを示すことはできますが、問題が発生する理由を説明するものではありません。そのため、フィッシュボーン図やFMEAといった、より詳細な調査手法と組み合わせて使用することで、その効果を最大限に発揮します。
故障モード影響解析(FMEA)
故障モード影響解析(FMEA)は、プロセス、製品、システムがどこでどのように故障する可能性があるかを特定し、その故障がもたらす潜在的な影響を評価するための体系的な手法です。考えられる各故障モードについて、影響度(影響の深刻さ)、発生度(故障が起こる可能性)、検出度(問題が害を及ぼす前に特定できる可能性)という3つの主要因を検討します。これらの要因を組み合わせてリスク優先度数(RPN)を算出し、直ちに対処が必要なリスクの優先順位付けができます。
FMEAは高度に構造化されており、多くの場合、プロセスの手順、潜在的な故障モード、原因、推奨される是正措置を一覧にした詳細なワークシートとして文書化されます。自動車、航空宇宙、医療など、信頼性と安全性が重視される業界で広く活用されています。たとえば医療機器の製造では、FMEAはチームが、患者の安全を脅かす可能性のある故障を予測し、未然に防ぐのに役立ちます。
この手法は本質的に予防的であり、設計やプロセス開発の段階で適用すると最も効果を発揮します。主な制限点は、特にコンポーネントの多い、複雑なシステムの場合、時間がかかり、リソースを多く消費する可能性があることです。とはいえ、その体系的な性質から、プロアクティブなリスク管理のための最も強力なツールの一つとなっています。
故障の木解析(FTA)
故障の木解析(FTA)は、複雑なシステム内で故障がどのように発生するかを分析するために用いられる、トップダウンの演繹的なアプローチです。システムのクラッシュや安全上のインシデントなど、明確に定義された望ましくない事象から始め、そこから逆方向にたどって、考えられるすべての寄与要因を特定します。ANDやORといった論理ゲートを用いて、事象や条件のさまざまな組み合わせが、どのように最上位の故障につながるかを表現します。
出来上がった故障の木は、因果関係を構造化して視覚的に表現し、個々の故障がシステム内でどのように相互作用するかを理解しやすくします。基本事象に確率を割り当てる定量分析を適用することもでき、チームは最上位の故障が起こる全体的な可能性を算出できます。
FTAは、航空宇宙、原子力、防衛など、一回の故障が重大な事象につながる業界で特に高い価値を発揮します。エンジニアによる重大な故障箇所の特定や予防策の優先順位を付けを可能にし、安全規制への準拠を強力に支援します。ただし、精度の高い「故障の木」を作成するには、詳細なシステム知識と信頼性の高いデータが不可欠であり、大規模なシステムでは分析が複雑になることがあります。
注目の根本原因分析(RCA)ツール
1. Selector
Selectorは、ネットワーク、インフラストラクチャ、関連サービス全体にわたって、相関分析と根本原因分析を自動化する、AIによるオブザーバビリティおよびAIOpsプラットフォームです。多種多様なテレメトリ(イベント、ログ、メトリクス、NetFlow/gNMI/BMPといったネットワークシグナル)を取り込み、共通のモデルへ統合します。これにより、チームは最も可能性の高い原因を素早く切り分け、影響範囲の評価から対策の検証までをスムーズに行えます。ハイブリッドかつマルチドメインな環境向けに構築されたSelectorは、データ中心のアプローチによって、迅速で説明可能、かつ再現性の高いRCAを実現します。
主な機能は次の通りです。
- マルチテレメトリの相関分析と因果関係によるグルーピング:症状、変更、依存関係を自動的に結びつけ、アラートの羅列ではなく、可能性の高い単一の根本原因を浮き彫りにします。
- トポロジーと依存関係を考慮した分析:デバイス、インターフェース、サービスの関係性を用いて、各レイヤー(L2〜L6)にわたって障害をたどり、アプリケーションの健全性を基盤となるインフラストラクチャの状態と結びつけます。
- RCAのための変更インテリジェンス:インシデントに先行して行われた最近の構成や状態の変更(差分など)を強調表示し、「何が変わったのか?」、変更調査を迅速化します。
- 自然言語Copilot:オペレーターが平易な言葉で質問(「地域Xでなぜレイテンシ(遅延)が急増したのか?」)でき、根拠に基づく説明と次のステップを得られます。
- インシデントのタイムラインとレポート:ワンクリックで表示できるタイムライン、インシデント後のサマリー、トレンドビューにより、再発を防ぎ、是正措置を文書化します。
- オープンな統合:一般的なデータソースやチケッティング/ITSMツールと接続し、証拠を取得し、タスクを作成し、修復を完了まで追跡します。
2. TapRooT
TapRooT®は、組織がインシデント(特にヒューマンエラーや設備の故障に関連するインシデント)の根本的な原因を特定し、是正するための構造化された根本原因分析システムです。明確に定義された調査プロセス、証拠に基づく分析、専門的なトレーニングを組み合わせ、安全性、信頼性、品質におけるパフォーマンスを向上させます。
主な機能は次の通りです。
- 構造化された調査フレームワーク:インシデント調査を実施し、根本原因を特定するための、一貫した段階的なアプローチを提供します。
- インシデント調査ソフトウェア:インシデントの記録、原因の分析、是正措置の解決までの追跡を行うためのツールを提供します。
- Equifactor®による設備分析:設備のトラブルシューティング手法を統合し、繰り返し発生する機械的・技術的な故障の原因を特定します。
- トレーニングと認定:公開コースとオンサイトコースを提供し、調査担当者のスキルを高め、チーム全体でRCAの実践を標準化します。
- 業界横断での適用:石油・ガス、製造、製薬、公益事業など、パフォーマンスと安全性が重視される業界で使われています。

3. EasyRCA
EasyRCAは、組織全体でRCAの実践を簡素化・標準化する根本原因分析ソフトウェアプラットフォームです。チームが実証済みの手法を迅速に適用し、調査を追跡し、是正措置が確実に実施・監視されるようにします。
主な機能は次の通りです。
- 一元化されたRCAプログラム管理:すべての根本原因調査を単一のプラットフォームで管理し、チームや拠点間でRCAを利用しやすくし、一貫性を確保します。
- 視覚的な分析ツール:チームが問題、寄与要因、原因を可視化するグラフィカルなツールにより、調査を簡素化します。
- ワンクリックのカスタムレポート:わずかな手間で、ステークホルダーにそのまま共有できる最適なRCAレポートを生成します。
- 是正措置の追跡:統合されたAction Centerにより、是正措置の実施状況と有効性を監視します。
- 検索可能なRCAデータベース:過去のRCAデータを簡単に保存・検索でき、ナレッジ共有と将来の問題解決に貢献します。

4. Intelex
Intelexの根本原因分析ソフトウェアは、クラウドベースのソリューションであり、組織がプロセスや製品の不具合を特定、対処、および防止するための一連のRCAツールと手法を提供します。これにより、チームはWebベースのプラットフォームから、調査の管理、トレンドの分析、是正措置の実施を行うことができます。
主な機能は次の通りです。
- 一元化されたインシデントデータ管理:インシデントとRCAのデータを一か所で取得・管理し、分析、追跡、レポート作成を簡素化します。
- 目的に合わせたRCA手法:なぜなぜ分析(5 Whys)、フィッシュボーン図、TapRooT、ギャップ分析など複数の分析手法をサポートしており、チームは各問題に最も適した手法を適用できます。
- 統合されたワークフローと通知:プロセスの手順とステークホルダーへの連絡を自動化し、タイムリーな調査とアクションの確実な実行を保証します。
- トレンドと原因の分析:現在のインシデントデータと過去の記録を集約し、繰り返し発生する問題を特定し、リスク軽減戦略の指針とします。
- 是正・予防措置(CAPA)の管理:根本原因をアクションプランに紐付け、部門を越えて実施状況を追跡することで、確実な改善サイクル(クローズドループ)を実現します。

5. Causelink
Causelinkは、調査の簡素化と組織全体のナレッジ蓄積に特化した、RCAおよび故障モード影響解析(FMEA)のソフトウェアプラットフォームです。付箋やフリップチャートを用いる従来のアナログ手法から脱却し、なぜなぜ分析(5 Whys)、特性要因図、因果関係のロジックツリーなどの主要なRCA手法をサポートする、構造化されたオンライン共同編集機能を提供します。
主な機能は次の通りです。
- 複数のRCA手法のサポート:なぜなぜ分析(5 Whys)、フィッシュボーン図、因果関係のロジックツリー、インシデントのタイムライン、FMEAのためのツールが含まれます。
- ドラッグ&ドロップの調査ツール:視覚的なツールにより、問題の構造化、証拠の整理、および共同でのRCA図の作成が容易になります。
- AIを活用した解決策とレポート:解決策の自動提案とレポート作成を支援し、調査完了までの時間を劇的に短縮します。
- アクション追跡ワークフロー:是正・予防措置を割り当て、進捗を監視し、解決策の追跡によって確実な問題解決を図ります。
- 証拠とドキュメントの管理:問題の記述から裏付けとなる証拠、原因、解決策までを構造化データとして記録し、組織のナレッジ蓄積や監査への迅速な対応を支援します。

まとめ
根本原因分析ツールは、目先の応急処置にとどまらず、障害やエラー、業務上の非効率に潜む「本質的な要因」を明らかにするための、構造化されたアプローチを組織に提供します。調査手法を標準化することで、問題解決を迅速化するだけでなく、長期的なシステムの信頼性を高める予防策の策定も支援します。RCAを日々の運用に組み込むことにより、組織のナレッジ蓄積を促し、コンプライアンスを強化しながら、インシデントの再発リスクを最小限に抑えます。
SelectorのAIOpsプラットフォームがIT運用をどのように変革できるか、詳しくはこちらをご覧ください。
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